トニカクカワイイ

SPECIAL

2020.10.07

鬼頭明里さん&榎木淳弥さんのスペシャルインタビュー

天才のナサと謎多き司は
何もかもが普通じゃない!!

――演じるキャラクターの第一印象を教えてください。

榎木
星空(ナサ)はすごく頭が良くて、能力もありますが、司がからむと途端に残念な人になって、どこかに飛んでいってしまう。普段賢いのに、どうしてこんな感じになってしまうのだろう? そんなかわいい一面があるキャラクターだなと思いました。家事とかもなんでもできますが、効率化を目指しているので普通とは少しズレていて、天才って変わっているんだなって。

――司はどうですか?

鬼頭
すごく不思議な子だな。なんか謎というか、何かありそうだなって。
榎木
ぜったいあるよね。
鬼頭
「○○だよ」「なんだ?」とか、口調やしゃべり方もつかみ所がない。不思議な子ですけど、ナサといるときだけはかわいい面を見せたり、照れたりして、普通の女の子になる瞬間があったりして、そこがすごくかわいい。人間なんだなって思える子です。

――まだ原作でも謎は明らかになっていませんが、畑先生が書かれた「司の秘密」はご覧になったそうですね?

鬼頭
オープニングを歌うにあたって、歌詞がその(秘密の)部分に触れているところがあるので「知っておいてください」ということで拝見しました。
榎木
先のお話が書かれていたんですか?
鬼頭
先のことではなく、司が何年か消えていた時期に何をしていたのかなどが書かれていました。

――原作で特に印象に残ったシーンやセリフはありますか?

鬼頭
血まみれになったナサに、司が「大丈夫。人はこの程度では死なないよ」「それに君は…まだ死ぬ気もないのだろ?」と言っているところが衝撃的でした。

――司自身も血まみれですし、治療もせずに立ち去ってしまいます。

鬼頭
第1話を読んだときはファンタジーの話なのかなと思ったのですが、それ以降はただ夫婦のイチャイチャみたいな。ですから、逆に冒頭のシーンが引っかかるというか、印象に残りました。一緒に暮らすようになってからは、かわいらしい普通の女の子ですし……。でも、やっぱり「私と結婚してくれるなら、付き合ってあげる」「はい!! 喜んで!!」のところかな。司のすごい要求に、ナサはすぐ「はい」って言うし。
榎木
一目惚れですからね、完全に。僕が印象に残ったのは「この世で最も科学的なことは、先に直感だけを示す答えがあって、後からそれを証明したんだ」「愛が証明されたから結婚するんじゃない」「愛を証明するために…結婚したんだ」というシーンです。愛を確認してから結婚するのではなく、直感で「この人となら」となって、結婚してから愛があることを探していくという考え方は新しかったですね。

――順番がおかしいですよね。

榎木
そうですよね。昔であれば、お見合いをして、結婚してから、だんだん家族になっていくというかたちもあったでしょう。でも、現代で考えると、ちゃんとお付き合いをしてから結婚するのが主流ですよね。つまり、ナサと司は運命的な出会いだったということがわかるセリフが、このシーンに詰まっています。

日常もギャグもかわいらしさも、
見てほしいのはギャップ

――ナサと司を演じるとき、気をつけていることはありますか?

榎木
畑先生の作風があるので、その空気感は大切にしています。小ネタが挟まる場面や、キャラクターの等身がかわいくなったり、口が三角形になるなど表情が変わったりするギャグシーンと真面目なシーンとのメリハリなど、原作から感じられるノリも意識して演じていますね。
鬼頭
オーディションのときに「かわいくしない」という指示がありました。いわゆるヒロインらしい演技ではなくクールな感じを求められたので、(アフレコでも)かわいくなりすぎないことを念頭に演じています。日常のシーンがかわいすぎないから、たまにデレているところがよりかわいくなる。そのギャップがいいのだと思います。
榎木
司は、余計なことをしなくてもかわいいのだと思う。
鬼頭
確かにそうですね。

――視聴者の方にも注目してほしいシーンはどこですか?

榎木
第1話の告白シーンは、いきなりクライマックスのような展開で「今後どうなっていくのだろう?」という期待をあおってくれます。ナサが司に「どれだけ一目惚れしたのか」という熱い気持ちを大事に演じたので、ぜひ注目していただきたいです。

――順番から言うと最終話でもおかしくないですよね。

榎木
いきなり告白から始まるのは印象的です。
鬼頭
私が印象に残っているのは、第1話の最後です。「頼むよ。だんなさま♡」というセリフがあるのですが、初めて司が笑顔を見せるシーンだったので、どこまで(笑顔を)演じていいのか……。
榎木
確かに「あまりかわいくしないで」と事前に言われているからこそ、バランスが難しいシーンでしたね。
鬼頭
でも、こういうシーンはちゃんとかわいくていいはずなので、かわいい笑顔になるように演じました。あと、第1話はナサくんがずっとフルパワーでしゃべっていて迫力があるので、そこも注目ポイントです。
榎木
圧が……。
鬼頭
必死感がとても伝わってきます。

2人だけの世界が作れるアフレコ現場はナサと司の関係にぴったり!?

――今はアフレコも難しい情勢ですが、『トニカクカワイイ』の収録はどのように行われていますか?

榎木
基本的に、鬼頭さんと僕の2人で行っています。ほかの方は分けて、シーンごとに収録するかたちです。今は(アニメ本編に)2人しか出ていないので、ソーシャルディスタンスに配慮した収録になっています。

――お2人が主演として組まれるのは初めてだと思います。それぞれのお芝居についてはどう感じられましたか?

榎木
司は「○○だな」「××だね」というように独特のしゃべり方(特に語尾)なのですが、同じような言葉遣いでもテイクによってお芝居を変えていたりして、毎回聞くのが楽しみになっています。それも「(かわいらしさを)出そう!」と思って演じているのではなく、鬼頭さんから自然に出ているのがいいですね。ちょっといたずらっぽいところとか。
鬼頭
榎木さんのまっすぐなお芝居が、ナサにすごく合っていると思います。悪意とかを本当に何も考えずに、正直に言ってしまうところですとか、ちょっぴり天然なところが声からにじみ出ていて……とてもいいと思いながら聞いています。
榎木
すみません。僕、そういうところがあるんで!
鬼頭
ふふふ。でも(ナサと)榎木さんは似ているなって思います。

――アフレコに臨むスタイルも大分違いますよね。榎木さんは身体に出る感じで。

榎木
ナサは特に感情表現が豊かなので、身体の動きに出ますね。
鬼頭
ちなみに、私はぜんぜん動かない派です。
榎木
今はディスタンスで、2人の間にパーティションがあって、お互いの姿がうっすらとしか見えません。幻想的な感じで……姿は見えないのに声だけ聞こえてくるんですよね。それが逆にやりやすさを生んでいるような気もして、おもしろい収録になっています。

――映像を見ず、パーティションのほうを見ながら演じていることもありますよね?

鬼頭
えっ、私のことを見ているんですか?
榎木
そうそう。
鬼頭
台本を見ているから、顔が横を向いているのだと思っていました。
榎木
いやいや、台本は見ず、鬼頭さんのほうを向いて演じているんです。でも、(パーティションで)見えない。(『鶴の恩返し』の)鶴が向こうで機を織っているみたいな、そういうイメージです。神秘的な感じでおもしろい。

――まさにナサと司の関係みたいですね。ずっとナサが司に話しかけている。

鬼頭
確かに。
榎木
不思議な感じで。

向かっている方向は違えど
ナサも司も料理力に魅力あり!

――キャラクターとして見たとき、ナサや司はどんなところが魅力ですか?

鬼頭
料理ができること! 見習いたいですし、奥様にするなら最高ですよね。
榎木
そういえば、料理、今日出てくるんです(インタビューは第3話収録日に実施)。

――鬼頭さんは、お料理は作らないんですか?

鬼頭
時間があればやります。それこそ丸一日休みのときとかでしょうか。
榎木
えっ、丸一日? 時間欲しすぎじゃないですか?
鬼頭
買い物にだらだら行って、準備して、まったり作りたいです。
榎木
同じく料理のことになってしまいますが、ナサは鍋が究極の栄養が摂れるメニューであると言います。鍋料理は、野菜もお肉もおいしく食べられて、何より楽に調理ができるので、すごく共感できる。僕も冬は鍋ばかり作っています。

お気に入りを食べ続ける鬼頭さんと何かひと味足りない榎木さん

――ナサの鍋は毎日同じ味ですが……。

榎木
さすがに僕は味を変えますよ。
鬼頭
私は毎日キムチ鍋でも平気かも。野菜と肉で2食分。その後にうどんをいただきます。
榎木
確かにキムチ鍋は飽きが来にくいかな。でも、僕は一人鍋用のプチッとするのが便利で使っています。

――お2人の得意料理は何ですか?

鬼頭
自粛期間中に「小松菜と豚肉とたまごの炒め物」を覚えました。とてもおいしく作れるんですよ。
榎木
味付けは何?
鬼頭
コンソメとにんにく、塩こしょうで炒めるだけです。濃いめにして、めちゃくちゃ作って、めちゃくちゃ食べて……太りました。

――濃い味がお好きなんですか?

鬼頭
濃い味にしちゃいますね。ごはんがすすむ系で、作るたびに濃くなっていって、止まらなくなりました。

――作るきっかけはなんだったんですか?

鬼頭
ふるさと納税で小松菜が届きまして、どう使うかレシピを調べたときに出てきたメニューでした。

――で、作り続けて……ひとつハマるとずっと同じ?

鬼頭
そうなんですよ。ハマると同じものを作りますし、嫌になるまで食べますね。

――記事になるころは「もう小松菜見たくない」となっているかもしれませんね。

鬼頭
なっているかもしれません。
榎木
僕は普段はほとんど作りません。3食すべて外食だったり、コンビニで買ってきたり……。一応、料理はできるのですが、なんか……おいしくない。
鬼頭
おいしくない?
榎木
味が薄いというか、何か足りない。深みがない。
鬼頭
レシピを見て作っていますか?
榎木
見ていないですね。鶏ガラスープの素は何にでも入れているんですけど。いつも味が足りなくて……みりんなのかな? その足りない何かを知りたいところです。でも、基本は外食派ですね。

ナサと正反対の榎木さん
司に共感できる鬼頭さん

榎木
ちなみに、ナサは数学が得意なところもいいです。高校のとき、本気で勉強をしたのに数学のテストで0点を取ったことがありました。答案も八割方埋めたのに、0点だったという。そのときは先生に「史上最高のばか」って言われました。そんな思い出があるくらい苦手なので、数学ができるナサはすごいと思います。

――ナサは勉強バリバリですものね。司は料理が得意なこと以外に何かありますか?

鬼頭
ちょっとオタクで、ゲームとか映画とかが好きなところ。
榎木
鬼頭さんもオタクですものね。
鬼頭
そうですね。お休みがあったらゲームをしたり、アニメを見ちゃいます。一回めちゃくちゃハマったゲームがありまして、寝る間も惜しんで、頭が痛くなるまで遊んでいました。
榎木
それはすごい。オタクな部分に共通点が。
鬼頭
私、司のこと、理解できているかもしれない。

――お互いのキャラクターを見たとき、ナサと司のどこがトニカクカワイイですか?

榎木
司はやっぱり「つかみ切れない」ところがいいと思います。若干見えていない部分があるからこそ、想像する楽しさがありますし、自分(ナサ)のことを「どう思っているのだろう?」と考える余地があります。「本当に好きで結婚してくれたのかな?」と、不安になったりすることも含めて、ナサは夢中になっているのかな。そのうえで、たまにデレる。そんな一面も司のかわいいところですよね。
鬼頭
ナサは「(司のことを)まっすぐに好いていてくれる」ところが、わんこみたいでかわいいと思います。
榎木
確かに。
鬼頭
好きなんだろうな、ということが司にも伝わって来ます。一途に好いてくれて、あんなに尽くしてくれるのはとてもいいですね。

――ほかに気になるキャラクターはいますか?

鬼頭
千歳かなぁ……。なんか、キャンキャン吠えているポメラニアンみたいな。小動物感が否めない。

――先ほどナサはわんこみたいとおっしゃっていましたが、ナサも千歳も犬だから司のところに寄ってきている?

鬼頭
そうかもしれません。(千歳は)ナサにかみつこうとしているけど、ぜんぜん響いていない。いつも一生懸命だけど空回っている。でも、結局は司のことが大好きな、とてもいい子。かわいいですよね。
榎木
僕は、銭湯の2人ですかね。要と綾がからむとギャグに加速がかかる。ナサは結構ぼけているというか天然ですが、そこに輪をかけて天然な綾が加わって、かき回す要が来るとカオスになって……。その空気感はナサと司が2人でいるときとは違っていて、おもしろいコメディーパートができます。

現実世界で一目惚れは難しい!?
そして2人の理想のプロポーズとは?

――ところで、お2人はナサのように一目惚れしたことはありますか?

鬼頭
私は直感タイプかもしれません。服を買うときも「あ、いいな」と最初に思ったら、悩んで悩んで、「いったん止めておこう」と思ったものを、だいたい買いに戻ります。「やっぱりアレほしい!」と。
榎木
僕は(一目惚れは)ないですね。買い物で友達はみんな何かしら買っているのに、僕だけ買わないことが多い。友達から「いや、お前も買えよ」って煽られるんですけど、「いや、まだちょっと早い」と。
鬼頭
物欲はあるんですか?
榎木
物欲はそんなにないですね。何かを購入するときも、あせって買うのではなく、一回ほかのものと比べてみます。「もっと安いものがあるかもしれない」と。
鬼頭
それは効率がいいですね。
榎木
パッと、いきなり決めることが嫌なのかもしれません。

――ナサと司が逆なんですね。ところで、お2人にとって理想的なプロポーズはどんなシチュエーションですか?

榎木
う~ん、でも自分からはしたくないです。
鬼頭
えーーーー!!
榎木
でも、ちょっとプレッシャーじゃないですか。「断られたらどうしよう?」と考えてしまうので、受動的でいたいです。

――相手から「そろそろ結婚しよう」と言われるのがいい?

榎木
あ、でも一回ちょっと渋るかもしれません。
鬼頭
そこは受けてくださいよ。
榎木
いやー。「でもちょっと早いんじゃないかな?」と言いそうです。

――榎木さんがされたいプロポーズはどんな感じですか?

榎木
僕が女子みたいな立場になっていますが……。(プロポーズを)するとしても、されるとしても、あまりかしこまった感じは嫌なので、あえて言うならプレッシャーのないプロポーズでしょうか。重くなくて、さりげない日常会話のように。
鬼頭
あぁ、そうかもしれないですね。私もあまり大々的にされないほうがいいかもしれません。
榎木
フラッシュモブとかされたら最悪ですよ。断れないですもの。
鬼頭
確かに……。って、断る前提でいるんですか?
榎木
それは相手によるじゃないですか。
鬼頭
う~ん……難しい。私はプロポーズされたい相手が浮かばないと、「はい」という未来が想像できません。あえて言うなら、ごはんを食べた後にさらっと「そういえば」と言って指輪を渡されるみたいな。
榎木
めっちゃついでみたいじゃないですか!

大きなお風呂の楽しみ方は
人それぞれでいい

――物語の舞台として銭湯が出てきますが、お2人は銭湯を利用していますか?

榎木
何年か前まではよく行っていました。脱衣所とかで人の会話を聞いているのが楽しい。
鬼頭
えー。
榎木
劇的な会話をしている人がいたりします。あるとき、友達同士で来ているような学生さんがいたので聞き耳を立てていたら、「この間告白されちゃってさ」「オレ、友達としてしか見ていないんだよな」みたいな。身体を拭くのを忘れて、ずっと聞いていました。
鬼頭
私はスパ施設が好きでよく行きます。風呂上がりのジュースとかコーヒー牛乳は最高なので、ぜったい飲んじゃいますね。あとはアイスクリームとか。

――スパだとメニューも充実していますよね。

鬼頭
美容に気を遣った気がするのもいいところです。お薬の入ったいいお湯に入ったり、長湯で代謝がよくなったり……。健康になった気がするところも魅力です。あと、電気風呂も好きです。

新しすぎる唯一無二の
オープニングテーマ

――鬼頭さんはオープニングテーマ「恋のうた(feat.由崎司)」も担当されていますが、レコーディングはいかがでしたか?

鬼頭
早口なところが多くて変わった曲という印象でした。でも、Yunomiさんのこだわりがすごくて、とても新しい曲でもあります。歌だけでなく「こういうギミックを入れたい」というお話で、いろいろな音声をたくさん録りました。完成した曲を聞いたとき、「あれ、あの音どこで使っているんだろう? マジでわからない」というくらいです。本当におまじない程度に採用されているのだとは思いますが……。
榎木
おまじない?
鬼頭
そうなんです。録音したセリフを編集して、EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)のように、ピピピピピと使っていたりします。ほかにも「久しぶり」というセリフを一文字ずつ録って、それを効果音のようにしたり……。

――曲の中でどう使われるかわからない音をたくさん録った?

鬼頭
はい。レコーディングのときは、Yunomiさんの頭の中にしか設計図がないので、みんな「とりあえず録っておこう」という感じでした。私は、原作を読み、さらに畑先生による「司の真相」も読んでから拝見しましたが、歌詞が司とシンクロしていてすごかったです。Yunomiさんがめちゃくちゃ読み込んで曲を作ったことが伝わってきました。そのこだわりが詰まっていますし、今まで聞いたことがない曲になっています。Aメロ・Bメロ・サビの概念がないんです。

――ボーカロイドが歌っているデモテープを初めて聞いたとき、正直、「人間が歌えるのか?」と思いました。

鬼頭
そのくらい早口なところがあります。
榎木
その早口な部分は加工していない?
鬼頭
はい。そのまま早口で歌いました。Yunomiさんから「言葉をなめらかにつなげてほしい」という要望があって、なかなか難しかったです。

声優を目指すきっかけと
実際の仕事で得たものとは?

――ところで、声優に憧れたり、目指している読者も多いと思います。お2人が声優の道を選んだきっかけは何だったのでしょうか?

榎木
それはもうサンデーのアニメ作品を見て……。

――ありがとうございます!

榎木
昔から漫画やアニメが好きでしたが、職業として意識したのは大人になってからですね。エンドロールで声優さんのお名前が流れていることを認識した感じです。

――それまでは別の進路をお考えだったのでしょうか?

榎木
学校の先生になろうと思っていました。大学でもそういう勉強をしていたのに急に……なんでしょう、ノリですかね。

――急な方向転換に対する周囲の反応はいかがでしたか?

榎木
家族は大丈夫でしたが、友達には止められました。大学の授業中に(声優を目指すことを)話したら、そのまま外に連れ出されて説教されましたね。
鬼頭
えー、そんなに!
榎木
「お前、ちゃんと考えろ」と怒られました。僕には「ゼロか100か」という部分があって、一度決めたら即行動するタイプなのですが、そこも含めて「一度しっかり考えなさい」ということでした。

――鬼頭さんはどうして声優さんの道へ進まれたんですか?

鬼頭
私も昔からアニメが好きでした。小学校6年生くらいから声優さんのラジオを聞き始めて、「すごく楽しそうだな」と思ったこと。何より、アニメのキャラクターになれるということが興味を持ったきっかけです。でも、本気で目指したのは高校で進路を決めるときでした。

――6年くらい経って実現に向かって動いた感じですか?

鬼頭
初めて(声優に)興味を持った小学生のときは「上京」というハードルがありました。絵を描くことも好きでしたから、当時は「イラストレーターや漫画家になれればいいな」という感じでしょうか。高校卒業後の進路を考えたときも、初めのうちは地元の美大に通うつもりでいました。そんなお金はないとは言われていましたが、「いざとなったら出してくれるだろう」くらいでいたので。
榎木
そんな甘い考えで……。
鬼頭
そんな調子で「大学どうしよう?」という話をしたら、「うちにはそんなお金はありません」と言われてしまいました。そうなると奨学金をもらって通うことになるわけですが、改めて「お金を借りてまで大学に行きたいのか?」と自問したら……そこまでの思いはありませんでした。一方で、「親孝行」「家族や親戚に恩返し」という気持ちは強くあり、イラストレーターになってゆっくり結果を出すよりも、早くビッグになって恩返ししたいという思いが強くなっていきます。そこで、上京して働きながら「自分のお金で声優を目指す」という道が見えてきました。

――なるほど。

鬼頭
ですから、もし親が大学進学のお金を出してくれていたら、声優ではなくイラストレーターになっていたかもしれません。

――あるいは漫画家?

鬼頭
そうですね。今も「ゆくゆくは絵も描きたい」と思っています。

――声優の仕事をしている中で、一番良かったことを教えてください。

鬼頭
私は「アニメに出たい」というのが第一でしたので、いろいろな作品で、さまざまな役を演じて、お芝居ができていることがうれしいですね。
榎木
いい答えだ……。僕は……自分が思い描いていた芝居ができた瞬間でしょうか。がんばったかいがあったと感じます。

――『トニカクカワイイ』で挑戦したいお芝居はどんなものですか?

榎木
僕はリアルに芝居をしたいタイプなのですが、作品ごとにやれることは違います。この作品では「エンターテインメントを意識している」ので、メリハリのある芝居を入れつつ、日常のリアリティーがある芝居を織り交ぜながら演じています。
鬼頭
私は「かわいらしいキャラクターをかわいらしく演じる」ことをやってきました。でも、司は「かわいく演じることを意識せずに、見ている方にかわいいと感じていただく」という新しいジャンルのお芝居ですので、そこをうまくできたらいいなと思っています。

――最後に、サンデーの読者にメッセージをお願いします!

榎木
いよいよ『トニカクカワイイ』のアニメがスタートしました。原作をリスペクトしつつ、アニメならではの表現もあると思います。原作もアニメも、どちらも楽しい作品になっていますので、ぜひご覧ください。よろしくお願いします。
鬼頭
原作にはすばらしいエピソードがたくさん詰まっていますが、アニメでは司やナサたちが動くことによって、かわいさや尊さが倍増していると思います。原作ファンもアニメからご覧になる方にも楽しんでいただける作品になっているので、ぜひぜひ最後まで見届けていただけたらうれしいです。

――公式サイトの読者にひとことください!

榎木
これを見たら結婚したくなるかも。
鬼頭
夫婦っていいな。

――ありがとうございました。